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美味佳肴に関する漢歌

『薫風濤声』 加藤隆三木著
萬珍樓
美濃吉
峴山亭

『晨風漢歌集』 加藤隆三木著
銀座アスター
酒処十徳
壺中天
ちゃんこ巴潟
天屋(上海)
梅の花
町田の生煎饅頭屋
なかめのてっぺん
親親一家人
桃家林


阿倍仲麻呂の生涯を書いた歴史小説

『唐風和月ー阿倍仲麻呂伝』加藤隆三木著 (410頁)
目次
序章 春日歌垣
第1章 霊亀遣唐使
第2章 曲水賽詩歌
第3章 大和出少年
第4章 負笈渡唐
第5章 天下揚州
第6章 從洛陽到長安
第7章 唐名仲満
第8章 太学生活
第9章 結交王維
第10章 遊学東都
第11章 栄中進士
第12章 賜名晁衡
第13章 秋風入洞房
第14章 行雲伏水
第15章 門下省
第16章 帰国何日
第17章 取道渤海
第18章 入秘書省
第19章 傾国妃子
第20章 送別贈裘
第21章 怛邏斯之戦
第22章 明州望月
第23章 贈剣王摩詰
第24章 踏上帰途
第25章 海上遇難
第26章 重返長安
第27章 随駕西行
第28章 蜀郡造箭
第29章 収復長洛
第30章 迎使来唐
第31章 再任器械使
第32章 赴任安南
終章 明月不帰 

『愛新覚羅溥傑・浩書画集』出版しました

今日は愛新覚羅溥傑さまの生誕記念日です。
この度、『愛新覚羅溥傑・浩書画集』を出版しました。
激動の近代史を生き抜いた二人の絆と海を越えた家族愛の詩章です。
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10月6日渋谷で講演会があります

2013年10月6日(日)午後2時、渋谷区文化総合センターで講演会があります。
題目: 和歌の漢詩への翻訳から考える日本の美意識と中国の美意識(加藤 隆三木)
内容:
1.和歌と漢詩の関係
  ・定型詩
  ・漢歌とは
  ・狭義の漢詩
  ・広義の漢詩
  ・和歌の漢訳とは
2.翻訳の基本と漢訳
  ・翻訳のコンセプト「信・達・風・形」
  ・七つの翻訳法
   音訳法/借訳法/直訳法/意訳法/対訳法/引伸法/説明法
3.和歌と漢詩の美意識の違い
 (1)時空間
 (2)「景」と「情」
 (3)人と、自然との接し方
 (4)リズムと押韻
 (5)レトリック
4.異なった美意識を生み出した背景
 (1)地理・地形・気候的要素
 (2)言語体系の違い
 (3)文化・歴史の違い
5.和歌漢訳における和歌作風の保持
 (1)自然に対する細かい観察という和の「風」を残す
 (2)日本的な表現をそのまま借訳
 (3)同字異義語の「信」と「達」
 (4)短歌の「形」の再現

当日、以下書籍を無料進呈いたします
 (1) 『思郷之歌』(DVD付) (歌詞) ………………………5部
 (2) 『唐風和月-阿倍仲麻呂伝』(歴史小説) …………2冊
 (3) 『日中経済・人的交流年表』(専門書) ……………1冊
 (4) 『中国の美意識・日本の美意識』*(専門書) ………1冊
*日本図書館協会選定図書
 (5) 『日本和歌三十首』(和歌漢訳集) …………………5冊
 (6) 『薫風濤声-短歌型和歌漢訳と漢歌』(詩歌集)……3冊
 (7) 『晨風漢歌集』(詩歌集) ……………………………3冊
別途ご購入もできます。

漢歌一首 御影堂

側耳聴濤声
薫風暁雲奇峰生
夢回天平甍
身命不惜伝聖戒
六渉滄波偉業成

昨年六月、鑑真(がんじん)和上(わじょう)坐像(ざぞう)が奉安されている御影堂(みえいどう)が公開されると知り、唐招提寺に行き拝観した。御影堂は境内の北側に位置し、堂内には国宝である鑑真和上坐像のほか、東山魁夷画伯が描いた障壁画「山雲・濤声」「黄山暁雲・桂林月宵・揚州薫風」が収められている。それらの名作を拝見することは長年の宿望であった。墨と群青で描かれた絵から「気」が伝わり、尊像の静かに閉じた両眼の奥から和上の信念の堅さ、徳望の高さと才知の博さを感得した。

[意訳]
耳を傾けて 濤声を聴く
薫風暁雲 奇峰に生じ
天平時代に帰る 夢のなか
身命(しんみょう)を惜しまず 戒律を伝え
伝世(でんせい)の偉業を 六度荒浪を渡って成し遂げる

二 翻訳のコンセプト「信・達・風・形」 『薫風濤声-短歌型和歌漢訳と漢歌』より (連載二)

二 翻訳のコンセプト「信・達・風・形」
 約百年前に、中国に厳復(げんふく)という教育家・翻訳家がいました。彼は若い頃に公費でイギリスに留学し、清朝末期に復旦大学と北京大学の学長を務め、ヨーロッパの近代的な学問を中国に紹介しようとして、ハク
スリーの『進化と倫理』(中国名『天演論』)、アダム・スミスの『国富論』を翻訳したことがあります。
厳復は『進化と倫理』のまえがきでよい翻訳の基準を「信(しん)・達(たつ)・雅(が)」で表現しました。彼がいう「信」とは原作の内容に忠実であること、「達」とは訳文の表現が流暢で的確であること、「雅」とは訳文が優雅で品のあることをいっていました。この「信・達・雅」はすべての翻訳に適用できるといわれてきました。
 しかし、問題もあります。「雅」でいえば、原文が上品ではなく下品であった場合、その訳は上品ではなくやはり下品に訳さなければなりません。結局、「雅」はいらないのではないかと、「信・達」だけでいいのではないかという議論になってしまいます。なんでもかんでも文学的に、上品に訳すとその作品が持つ個性がなくなってしまいます。やはり作品本来の「味」または「作風」というものは大事にしなくてはなりません。ここでそれを「風」といいましょう。
 さらに、形が求められる場合もあります。歌詞の場合は訳が原曲にぴったり合わなければなりませんし、映画の吹き替えはリップ合わせもしなければなりません。ここでいう「形」には二つの意味があります。一つは原作が詩であれば訳文も詩、原作が歌であれば訳文も歌という形をとらなければならないこと、もう一つは、特に定型文は外形上もなるべく原作と一致させる必要があるということです。
 よい定型詩または歌の翻訳は、「信(しん)・達(たつ)・風(ふう)・形(けい)」でよしあしが問われることになります。
(続く)

漢歌一首 阿波踊り

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遒男持扇揮
甲撥奏曲篠笛吹
盛夏年一回
名連舞場比高低
艶女戴笠似花飛

阿波踊りは大好きであるが、徳島にはなかなか行けなくて毎年の夏にはテレビで見ている。逞しい男たちが扇子を持って三味線、太鼓、鉦鼓と篠笛の伴奏曲に合わせて力強く踊る。各有名連が演舞場で競い合い、色っぽい女性たちが笠を被って踊る姿は実に美しい。
「踊」は漢文では「跳躍」の意味となり、「踊り」の意味ではない。「踊り」は漢文で「舞」になる。

[意訳]
力強い男たち 扇子を持って躍り
鼈甲撥(べっこうばち)で三味線を弾いて 篠笛(しのぶえ)を吹く
毎年の真夏に一回と
演舞場で 有名連が競い合い
艶っぽい女たち 網笠を被り 花が舞うように踊って進む

一 和歌漢訳の形 『薫風濤声-短歌型和歌漢訳と漢歌』より(連載一)

一 和歌漢訳の形
いままでは、和歌はどのような形に漢訳されていたのでしょうか。
和歌漢訳で一番多いのは漢詩型で、ほかに自由型・短歌型・準短歌型があります。

(一)漢詩型
『百人一首』に収録されている次の阿倍仲麻呂の歌が和歌のなかで最も多く漢訳されています。
[原文] 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
漢詩型の訳は、互いに似ている部分もありますが、手元にあるものだけでも一〇種類を超えます。具体例を見てみましょう。

[漢訳一] 
翹首望東天,神馳奈良辺,
三笠山頂上,想又皎月円。     (王暁秋訳)

[漢訳二]
回首望長天,長天月児円。
春日三笠山,明月出山前!?     (張俊彦・卞立強訳)

[漢訳三]
翹首望長天,神馳奈良辺,
三笠山頂上,想又皎月円。     (李正倫訳)

[漢訳四]
長天翹首望,万里一嬋娟。
昔日応相識,初昇三笠山。     (李芒訳)

[漢訳五]
遠天翹首望,春日故郷情。
三笠山頭月,今宵海外明。     (楊烈訳)

[漢訳六]
挙目望九天,神州氷輪現。
宛如旧時月,飛過三笠山。     (潘小多訳)

[漢訳七]
長空極目処,万里一嬋娟。
故国春日野,月出三笠山。     (劉徳潤訳)

[漢訳八]
極目雲海間,神馳三笠山,
当空這輪月,曾在故郷円。     (武徳慶訳)

[漢訳九]
遼闊長天玉鏡昇,仰首遥望動郷情。
猶是当年春日月,曾在三笠山頂明。     (訳者不詳)

[漢訳一〇]
万里長空色紺青,挙頭仰望起郷情。
遥懐今夕春日野,叁笠山巓皓月昇。     (訳者不詳)

[漢訳一一]
回首蒼穹思奈良,三笠山上明月光。     (謝志宇・文渝訳)

 形だけでいえば、最初の八首は五言絶句、次の二首は七言絶句で、最後の一首は七言の一部を切り取った形になっています。
 漢詩型漢訳で古いものとして『新撰万葉集』がありますが、それは翻訳というよりも同題創作といったほうがいいかも知れません。やや近いものとしては北京大学学長を務めたことのある銭稲孫氏の『漢訳万葉集選』があり、最近になって数多くの漢訳集が中国で出版されています。

(二)自由型
自由型に訳されている短歌もあります。字数は自由で、文書体または口語体で、現代風の題材に向いているといえます。
俵万智の「サラダ記念日」は次のように訳されています。

[漢訳一二] 
你説「這個味道真不錯」
於是 七月六日
成為沙拉紀念日     (蔡雅娟訳)

(三)短歌型
内容は勿論のこと、形も短歌に近づけようと、短歌の五七五七七の定型に則って訳しています。次のような訳し方があります。

[原文] 
君が行き 日(け)長くなりぬ 山尋ね 迎へか行かむ 待ちにか待たむ
[漢訳一三] 
国君在旅中,冉冉多日不回宮。
賎妾盼君帰,欲訪青山去迎君。待到何時見駕臨。     (羅興典訳)

同じく阿倍仲麻呂の歌で、歴史小説『唐風和月』のなかではこのように訳しました。
[漢訳一四] 
蒼蒼天之原 挙頭仰望思故園 神往春日辺
今宵三笠山頂上 一輪明月又中天     (加藤隆三木訳)

口語体の短歌型では次のようになります。
[原文] 
わたつみの 豊旗雲に 入り日さし 今夜の月夜 清(さ)やけ明かりこそ
[漢訳一五] 
汪洋大海上,旗幟般的彩雲中,透射着夕陽。
看来今天的月夜,一定分外地清凉。     (沈策訳)

(四)準短歌型
準短歌型は、短歌型から文字を減らした形になります。五七五七七から句を減らして五五七にするか、さらに五七にするか、短歌の形からそれぞれ二文字、三文字減らして三四三四四にしたものもあります。それは仮名と漢字の情報量を考えて訳したもので、次も阿倍仲麻呂の和歌の漢訳です。

[漢訳一六] 
仰首望長天,疑是昔時月,昇自奈良三笠山。     (李芒訳)

[漢訳一七]
翹望東天月,神馳奈良三笠山,皎月一様円。    ( 鄭民欽訳)

[漢訳一八]
長天漫遥瞩,依稀三笠山頭月。     (楼適夷訳)

[漢訳一九]
挙頭望長天,明月可在三笠山?     (張柏霞訳)

[漢訳二〇]
天蒼茫 仰首遥望 奈良辺
三笠山頭 旧時明月     (松浦友久訳)

和歌漢訳では、いままでは漢詩型が圧倒的に多かったといえます。
(続く)

坪野哲久 短歌漢訳一首 夏日午憩

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三夏日当空
仔牛悠悠解困慵
酣睡樹蔭中
桃樹怜犢似有情
欲添緑葉陰更濃

 この歌は、のどかな田園風景だけではなく、桃の木が日陰を濃くして仔牛を庇護しようとしている様子も描いている。母牛は歌の中に現れていないが、どこかで見守っているのではないかと、その姿が脳裏に浮かんでくる。それに加え、作者自身も近くから美しくて愛らしい仔牛の寝姿を眺めているようで、それらには愛が込められており、歌全体から自然と和みと癒しを感じ取ることができる。これこそが、なぜ和歌が美しいかの原点ではなかろうか。

[原文]
うつくしき 睡(ねむり)をねむる 仔牛いて
桃の木の下は 日かげ濃くなる

漢歌一首 伊豆の踊子

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初浴伊豆風
清純舞女遇書生
結伴越天城
川公名作今又読
繊細文筆伝心声

 つい最近、テレビで『伊豆の踊子』をまた見た。映画のなかの山口百恵と三浦友和は清純そのものなのかそれとも入魂の演技なのか分からないほど迫真で、とにかくこころが打たれた。文豪川端康成の原作はもうずいぶん長い間読んでいないので、一冊買って読み返してみたが、著者の繊細な描写には再び感服した。名作は案外短いものが多く、やはりボリュームではないと改めて思った。

[意訳]
初めて浴びる 伊豆の風
清純な踊り子 書生に出会い
伴って天城(あまぎ)を越える
再び読み通す 川端康成公の名作
繊細な作風 心声(こころのこえ)が伝わってくる

漢歌一首 美濃吉

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静室居鬧市
旬珍時品雅趣至
温馨盛情致
清麗中庭客心怡
百年京味伝今世

美濃吉池袋店は駅ビルの一五階に位置し、地下は混雑しているが一五階に上がると閑静な雰囲気に包まれており、何時行っても趣のある旬物を出してくれてこころが温まる。ビル内にありながら小綺麗な中庭があり、眺めていると心身を癒してくれる。歌では百年と書いたが、実は享保元年創立ですでに三百年近い歴史をもっている京都の老舗である。

[意訳]
静かな個室 繁華街のなかに
雅趣が至る 旬の一品
感じさせてくれる 温かいもてなし
清麗な中庭を観て 客心が和む
今日に伝わる 三百年続く京都の味

漢歌一首 敦煌 

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套靴跨高鞍
一歩三揺穏向前
清鈴響沙山
細看牽駝引路人
疑是秦俑今又現

敦煌に行ったときのことである。鳴沙山に行くと沢山の駱駝がいて、異国情緒に引きずり込まれて乗ってみたくなった。砂が靴の中に入るのを防ぐため長靴の形をしたカバーを履いて駱駝に乗った。ゆっくりと揺られながら沙山を目指して進み、よく見ると駱駝を牽(ひ)いている若者の面相が西安の兵馬俑で見た兵士の顔にそっくりであったのが印象に残った。

[意訳]
靴にカバーを履いて 高い鞍に跨り
ゆっくり揺られて 前に進みゆき
清澄な鈴音 沙山に響きわたる
駱駝を牽いている若者を よく見れば
そっくりではないか 兵馬俑で見た兵士と

順徳院 短歌漢訳一首  内庭雨後

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[漢訳]
驟雨俄頃停
留下天水積院坪
静坐対内庭
往日蛙声従未聞
而今呱呱競相鳴

夕立が上がって庭に水たまりができ、歌人は庭を眺めている。そこで、作者はふと何かに気づいた。庭で蛙が鳴いている、いままでは聞いたこともない、どこから来たのかな……夕立上がりの庭の景色と本人の感慨が描かれている。「夕立」「なごり」「かはづ鳴く」ということばから日本的な情緒がれ出ており、怡逸(いいつ)と感動を与えてくれる。藤原定家はなぜ作者のこの歌ではなく、他の歌を『小倉百人一首』に選んだのかと思ったことがある。

[原文]
夕立の なごりばかりの 庭たづみ
日ごろもきかぬ かはづ鳴くなり

漢歌一首 坪庭

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廊前小洞天
白砂雪見青竹垣
幽境方尺間
禅心静対風雨声
寥寂景中慕天然

白い寒水石に本格的な雪見(ゆきみ)型灯籠を買ってきて、日曜大工で浴室の前に坪庭を造った。湯に浸か
りながらライトが照らす小ぢんまりとした夜景を眺めると一日の煩悩が消え去り、なによりもいいのは屋外の雪・雨・風が直に小庭に注ぎ込み、時には落葉が舞い込んできたりもして、四季折々の変化をリアルタイムに感じ取れることにある。本当は「窓外」と書きたいところであるが、京都の情緒ある坪庭をイメージして「廊前」とした。「坪庭」ということばは中国語にはないが、日本庭園の象徴の一つとしてそのまま題名にした。

[意訳]
廊下の前に 小さな洞天
白い砂利に雪見と青い竹垣
一坪の間に幽境あり
風声雨音に面する 静かな禅の心
寂寥(せきりょう)たる景色のなか 自然を慕う

和歌漢訳一首 七夕

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彦星朝夕慕
織姫昼夜対機杼
相逢年一度
暗対天河心中求
今宵渡口浪且住

[原文]
彦星と 織姫と 今夜逢ふ
天の川門に 波立つなゆめ

[出典] 『万葉集』詠み人知らず

漢歌一首 萬珍樓

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粤系伝人在
万客接踵誠相待
名声海内外
善隣門内百年楼
食在萬珍極品菜

 旧萬珍樓時代には結構通っていたが、火災から萬珍樓は不死鳥のように見事に生き返った。本格的な広東料理として味ももてなしも雰囲気も最高であった。横浜中華街の善隣門から左側に看板が見え、明治二五年の創立からすでに百年以上経っており、中華街の広東料理といえば萬珍樓を思い出す。
 「接踵」(せっしょう)」は「絶え間なく顧客が次々と来る」という意味になる。

[意訳]
ここにいる 広東料理の伝承者
万客が接踵して来り 真心をもってそれに接し
名声 国内外に広く伝わる
善隣門内に 百年の老舗
食は萬珍樓極上の一品にあり

漢歌一首 露天温泉

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鱗波連遠空
風寒水暖意融融
凭岩望海穹
夕陽漸遠濤声近
時光流逝不知中

 かつて伊豆の熱海・今井浜・戸田・雲見・堂ケ島と伊勢の石鏡に行って、海が見える温泉に浸かったことがある。夕日に向かってやや肌寒さを感じる軟風(なんぷう)に撫でられると、よけいに湯の温かさを感じるものである。日が沈んでいくのが遠くなっていくようにも見え、周りが静かになっていくにつれて濤声がだんだん近づいてくるように感じ、時が逝くのを忘れる一時であった。結句の「不知」は、中国の四文字熟語「不知不覚」から採ったもので「知らないうちに」という意味になる。

[意訳]
鱗のような波 遠空に連なる
風が寒くて湯が温かく 和やかで楽しい心のなか
岩に寄りかかって 海の彼方を眺め入る
夕日がだんだんと遠ざかり 濤声が徐々に近づいてくる
知らないうちに 時が流れ去る

漢歌一首 屋形船

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彩橋海風泠
競赴台場酒舫軽
挙杯温友情
日落高楼天漸暗
満湾紅灯照群星

レインボーブリッジをそのまま漢訳すると「虹橋」になる。しかしそれだと上海の虹橋と誤解しかねない。レインボーブリッジはあくまでもレインボーブリッジであって虹橋ではないので、ここでは「彩橋」と表現することにした。第一句の「泠」はピンインでling(二声)と発音し、「さわやか」という意味で使われることが多く、「冷たい」の「冷」とは別字である。お台場から見ていて、湾内に数十隻もの赤提灯を掲げた屋形船が浮かんでいる幻想的な夜景には見惚(みと)れてしまった。

[意訳]
清らかで涼しげな海風が吹く レインボーブリッジ
先を競って軽く馳る お台場を目指す屋形船
盃(さかずき)を挙げて 友情を温める
夕日が高層ビル群に沈んで 夜空が徐々に暗くなり
湾内に満ちる赤提灯 満天の星を照り映す

漢歌一首 富士五合目

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穿越樹海間
一路盤旋向天辺
美景任流連
俯瞰両湖現下界
雲中銀頂露容顔

私は仕事の関係で富士山五合目には五、六〇回行ったことがあるが、今考えてみれば、プライベ
ートで一回頂上に登った時を除き、海外からの来客の世話をするのに気が取られてよく景色を見て
いなかった。しかし、これほど回数があると、記憶の断片を思い起こせば五合目の近くから眺めた
頂上の景色と、遠くで鱗光を放っていた山中湖と河口湖の光景が蘇ってくる。

[意訳]
車で樹海を通り越え
天に向かって 一路S字路を走り続け
美しい景色を観て 我を忘れる
俯瞰すれば 山中・河口の両湖が下界に見え
仰げば 銀色の山頂が雲のなかに顔を出す

漢歌一首 対馬

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翼船渡玄洋
浅茅時雨換秋装
漫坡披紅裳
下島深湾百舟泊
自古堪称海之窓

 対馬は先祖の地でもある。息子がまだ小さい頃、彼にも見てもらいたいと思い一緒に行った。博多港からジェットフォイル(水面下の翼とウォータージェット噴流で走る高速フェリー)に乗って玄界灘を渡り約二時間で厳原(いづはら)港に到着し、島を車で回ってみた。後で調べると、『万葉集』に「百船(ももふね)の 泊(は)つる対馬の 浅茅山(あさぢやま) しぐれの雨に もみたひにけり」と対馬を詠んだ和歌があった。

[意訳]
水翼船に乗って 玄海灘を渡り
時雨(しぐれ)が降る浅茅山(あさじやま) 秋の服に衣替え
山のスロープが 赤いマントをはおっている
かつて百隻の船が停泊した 下島(しもじま)の深い湾内は
古来「海の窓」といわれていたのに相応しい

漢歌一首 白糸の滝 

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山泉自成渓
水幕高掛石壁低
幽潭透晨曦
春蚕吐絲千百縷
能工原来是美姫

 数年前、久々に白糸の滝に行った。淀に注ぐ滝の響き、こだまのような余韻、石壁に掲げられて
いるような水幕に木々の隙間から照らし込む一射しの光に、こころが奪われた。恐らく目の前の景
色は源頼朝が見たのとあまり変わりはなかろう。彼は猟の帰りに滝に立ち寄り、あまりの美しさに
感激して「この上に いかなる姫や おはすらん おだまき流す 白糸の滝」と詠んだ。「おだまき」と
は、紡いだ麻糸を巻いた空心の玉のことで、その細い糸を垂らしたようだと比喩している。

[意訳]
山泉 自ずと渓流になり
高く掛かる水幕 低く見える石壁
幽寂な淀に 木の葉の隙間から朝日が射し込んでくる
春蚕が千百の白糸を吐き出しているようにみえ
器用な匠は もしかしたら美しいお姫様かも

『中国の美意識・日本の美意識』、お陰様で間もなく完売

お陰様で、
『中国の美意識・日本の美意識』は
日本図書館協会の「日本図書館協会選定図書」に選ばれました。
初版一刷は間もなく完売となりました。
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『薫風濤声-短歌型和歌漢訳と漢歌』加藤隆三木訳著(近日出版)目次

目 次
◆和歌漢訳編 
  大伴家持 秋さらば見つつ偲へと妹が植ゑし……  撫子花 
  小野小町 花の色は移りにけりないたづらに……  長雨
  菅原道真 東風吹かばにほひおこせよ梅の花……  庭中梅
  大江千里 月見ればちぢにものこそ悲しけれ……  独対長夜
  紀貫之 人はいさ心も知らずふるさとは……   昔日梅花
  能因法師 嵐吹く三室の山のもみぢ葉は……   龍田紅葉
  伊勢大輔 いにしへの奈良の都の八重桜……   八重桜
  慈円 有明の月のゆくへをながめてぞ…… 野寺暁鐘 
  藤原定家 見渡せば花も紅葉もなかりけり……   浦畔夕陽 
  順徳院 夕立のなごりばかりの庭たづみ…… 内庭雨後 
  良寛 霞立つ長き春日を子どもらと…… 春日 
  島木赤彦 みづうみの氷はとけてなほ寒し……   諏訪湖
  与謝野晶子 金色のちひさき鳥のかたちして……   落葉  
  釈迢空 葛の花踏みしだかれて色あたらし……   葛花
  坪野哲久 うつくしき睡をねむる仔牛いて……  夏日午憩 
  馬場あき子 わが生やこのほかに道なかりしか……  彩虹 
  来嶋靖生 日の沈み夕茜空背に負う…… 茜空 
  佐佐木幸綱 雨荒く降り来し夜更け酔い果てて…… 雨夜 
  小島ゆかり まだ暗き暁まへをあさがほは……  朝顔 
  俵万智 四万十に光の粒をまきながら……  清流 
◆漢 歌 編   
  白糸之滝 
  対馬 
  富士五合目 
  屋形船 
  露天温泉 
  萬珍樓 
  坪庭 
  前庭藤花 
  敦煌 
  阿波踊 
  平城白梅 
  桜井
  住吉大社 
  御影堂 
  美濃吉 
  峴山亭 
  伊豆踊子 
  ZED最終公演 
  秋景 
  後醍醐  
◆短歌型和歌漢訳と漢歌

『薫風濤声-短歌型和歌漢訳と漢歌』(近日出版)

『薫風濤声-短歌型和歌漢訳と漢歌』加藤隆三木訳著
近日小学館スクウェア社から出版の予定。

◆和歌漢訳編
 『万葉集』から現代短歌に至るまでの短歌名作の漢訳
◆漢歌編
 著者自作になる漢歌とその意訳
◆短歌型和歌漢訳と漢歌
 和歌漢訳の技法
 漢歌とは
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万葉集の短歌 阿保山の さくらの花は -阿保山の桜- 和歌漢訳

阿保山の さくらの花は 今日もかも
散り紛ふらむ 見る人なしに
 
弥生三月時 阿保山半桜満枝 今日又芳姿
風来緋瓣四下散 只嘆花落無人知

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平城紅梅 -漢歌一首 壬辰年睦月作

白妙映青松 
三冬景色満園中 
驀見幾枝紅
黄鶯囀啼残雪皚 
暗香襲来又春風

白妙の雪 青松を映し
園中に満ちる 極寒の冬景色
数輪の紅梅 ふと目のなかに飛び込んでくる
黄鶯がさえずり 残雪が白く輝いて
暗香が漂い 春風がまた吹きだした

阿倍仲麻呂の短歌 天の原 ふりさけみれば -明州観月-和歌漢訳一首

天の原 ふりさけみれば 春日なる
三笠の山に いでし月かも

蒼蒼天之原 挙頭仰望思故園 神往春日辺
今宵三笠山頂上 一輪明月又中天

崇徳院の短歌 瀬を早み 岩にせかるる -独対滝川-和歌漢訳

瀬を早み 岩にせかるる 滝川の 
われても末に 逢はむとぞ思ふ

浅灘湍流急 巨岩成堰阻清渓 独対滝川漪
雖分両路暫別離 終能相会在一夕  

源実朝の短歌 大海の 磯もとどろに -巨浪- 和歌漢訳  

大海の 磯もとどろに 寄する波
割れて砕けて 裂けて散るかも

大海掀巨瀾 轟撃海岸涌磯辺 濤濤衝向岩
化作水花四散飛 粉身裂骨天地間

山上憶良の短歌 去来子ども 早々日本へ -在唐憶故郷-和歌漢訳

去来子ども 早々日本へ 
大伴の 三津の浜松 待ち恋ひぬらむ

吾輩思緒飛 故土催人早日帰
御津大伴湄 日本海岸家郷松 心懐恋情待我回 

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